妊娠や出産は、人生における大きな喜びであると同時に、多くの費用がかかるライフイベントでもあります。特に、経済的な困難を抱える妊産婦さんにとっては、その負担は計り知れません。国際NGOの公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、こうした状況にある妊産婦さんたちへの支援活動「ハロー!ベビーボックス」の一環として、実態調査を実施しました。この調査は、経済的困難を抱える妊産婦さんと、彼女たちを支える支援者の双方を対象に行われ、その結果から、現代社会が抱える深刻な課題が浮き彫りになっています。
調査の目的と概要
この調査は、経済的な困窮に加え、若年妊娠(20歳未満での妊娠)や未婚・ひとり親、多子世帯(子どもが3人以上いる家庭)、妊産婦自身に知的障害や精神疾患がある、在留資格が不安定で公的な制度が利用しにくいといった、特定の困難を抱える妊産婦さんの実情を深く理解するために実施されました。
具体的には、妊娠・出産にかかる経済的な負担感、日々の悩み、そして本当に必要としている支援は何なのかを把握することを目指しました。さらに、自治体や医療機関、支援団体といった現場の支援者側にもアンケートを行い、妊産婦さんと支援現場との間にどのような意識のギャップがあるのかを明らかにすることも目的とされました。
有効回答数は、妊産婦さん本人による「一般応募アンケート」が316件(42都道府県)、自治体や支援団体などによる「代理応募」が637件(47都道府県)に上ります。
明らかになった厳しい現実
妊娠・出産期の深刻な経済的困窮
調査結果からは、妊娠・出産という大切な時期に、多くの妊産婦さんが経済的に非常に厳しい状況に置かれていることが明らかになりました。一般応募者の57.9%が「無職」と回答し、さらに驚くべきことに、世帯の貯金額が「0円」と答えた人が50.0%に達しました。

これは、妊娠・出産で働きにくくなる状況が、経済的な困窮に直結している現実を示しています。また、71.5%もの人が家族や親族に経済的な支援や大切な相談ができないと回答しており、経済的困難だけでなく、精神的な孤立感も深刻であることが浮き彫りになりました。
ひとり親世帯における養育費の課題
未婚またはひとり親の応募者に焦点を当てると、養育費の取り決めに関する非常に厳しい実態が見えてきました。養育費について文書で「取り決めをしている」と回答した人はわずか4.3%にとどまり、「取り決めをしていない」が32.9%と最も多くなっています。

さらに、「相手と連絡をとっていない、連絡がつかない、関係が切れた」という回答も23.6%ありました。養育費は、本来であれば子どもの権利として確実に受け取られるべきものですが、その確保が極めて難しい状況にあることが示されています。
妊産婦と支援者の意識のギャップ
希望する支援の内容についても、妊産婦さん本人と支援者側とで異なる傾向が見られました。妊産婦さん本人の一般応募では、「定期的な紙おむつやおしりふき、離乳食などの赤ちゃんに必要な消耗品の受け取り」が90.8%と最も高く、現金給付や経済的支援への希望も強い結果となりました。

一方、支援者による代理応募では、妊娠中や産後のメンタル面での支援、赤ちゃんとの愛着形成支援、家事・育児支援といった生活面の支援を重視する割合が高く、妊産婦さんが直面する経済的困難の深刻さと、それに対する支援のあり方について、両者間に意識の差があることが明らかになりました。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの提言と今後の活動
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、今回の調査結果を踏まえ、こども家庭庁をはじめとする関係省庁や自治体に対し、以下の4つの点を強く訴えていくとしています。
- 「物品支援・現金給付」の拡充と柔軟な活用
経済的な不安を抱える妊産婦さんが多いため、妊娠期から産後早期にかけて、すぐに役立つ物品支援や利用しやすい経済的支援を充実させること。 - 経済的支援を基盤とした生活・育児支援の必要性
経済的に深刻な状況にある場合、まずは物品やお金の支援を土台とした上で、生活や育児に関するサポートを行うことの重要性。 - 子どもの権利として養育費を確保するための、妊娠期からの伴走型支援
養育費の取り決めが非常に低い現状を踏まえ、養育費を子どもの権利として位置づけ、妊娠期から継続的に寄り添い、サポートしていくこと。 - 自治体とNPO、市民団体との積極的な連携
公的な制度だけでは対応が難しいケースにおいて、自治体がNPO(非営利団体)や市民団体と積極的に協力し、支援を補い合う体制を築くこと。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、引き続き「ハロー!ベビーボックス」事業を通じて、低所得世帯の育児費用の負担を軽減し、赤ちゃんが「健康に、安心、安全な環境で育つ」という子どもの権利が保障されるよう、支援を継続していくとのことです。2026年春の「ハロー!ベビーボックス」応募は4月頃に開始予定で、詳細は近日中にウェブサイトで公開される予定です。

まとめ
今回の調査結果は、経済的困難に直面する妊産婦さん、特にひとり親世帯が抱える深刻な課題を浮き彫りにしました。半数以上が無職で貯金がなく、養育費の確保も難しいという現実は、社会全体で真剣に受け止めるべき問題です。妊産婦さんたちが安心して出産・育児に臨めるよう、経済的な支援はもちろんのこと、精神的なサポートや、養育費の確実な確保に向けた伴走型の支援、そして行政と民間団体の連携が、これまで以上に重要になってくるでしょう。私たち一人ひとりが、こうした現状に関心を持ち、必要な支援が届く社会づくりに貢献していくことが求められています。
調査結果報告書の詳細はこちらからご覧いただけます。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの活動については、以下のリンクをご参照ください。
